2009年10月12日
Furniture connection Vol.1
「機能する椅子、道具としての家具」
http://www.kinokoubou.com/blog/archives/001769.html
ということで、11日、12日の二日間の企画展でした。
会場は大阪中之島、中央公会堂の展示室
いつ見ても趣のある建物です。
今回のテーマ「機能する椅子、道具としての家具」に寄せて、KAKUの椅子は、シェーカーチェアーを自分なりに解釈したもので、それに合わせる家具として、シェーカー家具の定番 drop leaf table を普段使いの『お勝手しごとテーブル』とネーミングして、アレンジ制作いたしました。
また、この椅子のコンセプトとして、会場に展示いたしましたパネルの文章を以下に転載させていただきますので、少し凡長ですが、よろしければご一読ください。
◆Funiture Connection vol.1 に出展するあたり
この椅子は、暮らしの日常で使われる普通の椅子というものを“木の工房KAKU”的に表現してみました。
お食事をすることはもとより、お裁縫、ミシンをかけたりといった家事しごと、読書やお手紙を書いたり、ティータイムのひと休みだったり
いろいろな場面で、ちょっと腰を掛けても、深く座っても家族の誰が座っても、「だいたいまあまあ」な、汎用性のある座り加減のそういう普通に身近な椅子……。
◆椅子についての考察
そもそも、椅子の歴史は5000年以上ある中で、日本に入って150年ぐらい(それ以前にも腰掛けは、あることにはありましたが、ここでの椅子とは別といたしましょう)
もっと日本の一般家庭で普通に使われ出して50年程度という中で、自分なりの日本人の暮らしの椅子というものを考えるようになりました。
一例ですが、座面の高さについていえば、
日本人の暮らしは、靴を脱いで室内に入ります。
靴を履いて座る椅子と裸足で座る椅子は、それだけで靴の厚み約2cmほど、座面の高さが変わります。
そこに人種としての体型の違いも加味しますと、単純に、西洋の椅子そのままでは座面の高さが違うということが考察されます。
もともと床での暮らしを中心としてきた住環境、文化、そして日本人の体型からも、少し低めの椅子が求められる素養がそこにあるでしょう。
また、椅子というのは、もともと座る道具であり、後から暮らしに入ってきたということもあってか、なんでも屋さん的な使われかたをされる、道具としての用途が強いと感じます。
◆椅子のデザイン
普通の椅子として、椅子の原風景を求めて
シェーカーチェアー、ウィンザーチェアー、民藝に象徴されるアノニマスデザインに憧れ、
バウハウスなど近代デザインに見られる機能美に惹かれながら、
人間工学や座る姿勢という知識への理解を深め、取り入れ、
正角柱(断面が正方形)を基本部材としたデザインをしています。
それは、
正角柱のもつ、点、稜線、面の直線的構成が日本人の潜在意識としての美意識に普通に存在しているであろうということ、
もっとも基本的な幾何形体で構成することで、カタチ(デザイン)の普遍性をもたせたいということ
カタチを単純化させることで、機能の汎用性を直感的に意識に訴えかけたいということ、
そして、
没個性の先に表われる個性や美というものがありえ表現しえるのか、という自己課題への、ひとりの今を生きる表現者としての自己問答ともいえるかもしれません。
◆椅子の構造
モノに永遠と完全はないという上で、極力、あたりまえの技術、技法、素材で制作しています。
それは、
普通にホゾ組の糊付で組んであれば、いずれ糊の接着力が限界に至っても、一般的な木工の知識のある技能者が理解できる構造であれば、分解でき、そして、修理することができます。
そして、長く使い続けることができます。
ただ、その基本的な木工技術の伝達も、昨今では難しくなりつつあるのが、少し心配ではあります……。
そして、だからといって強度をないがしろにするのではなく、構造としての基本強度を保たせるため、必要とされる技術と知識は常にそこへ注ぎ込んでいきたいと思っています。
また、椅子は部材が少ないほうが軽量かつ見た目が簡素化しますが、極力、貫を省くということはせず、基本構造を包括したデザインを心がけています。
それは、既成概念、潜在意識の中にある、見た目の安心感ということも意識しています。
◆さいごに
最小公倍数、最大公約数的なモノづくりを求めているので、一見、無機質な印象をもたれるかもしれません。
無駄が少ないかわりに、使い込んだ錆びが愛でる要素になる。
そういうモノであってほしいという気持ちがあります。
たぶん、自分自身が選ぶモノも、そういうモノが好きなんだと思います。
愛される普通の椅子……。
会場全体の展示もざっとこんな感じで、かなりカッコいいです。
公会堂の人気の洋食屋さんの横という立地もあって、沢山のかたにご覧いただくことができ、
また、今回のテーマ性にご興味を持っていただいたデザイン、建築方面の方のご来場も多く見られました。
これはひとえに、今回の企画のプロデューサー『家具の音楽』名嘉眞さんの尽力と、出展者の皆さんの思いがひとつのカタチになったのだと思います。
今回もいろいろ感じ、学ぶことが多かったです。
ありがとうございました。
ファニコレの二日間はそんなとこ。
投稿者 KAKU : 2009年10月12日 23:59